[パッケージ]林ぶどう研究所「林レーズン3種食べ比べセット」

 林ぶどう研究所さまの、「林レーズン3種食べ比べセット」のパッケージを制作させていただきました。デザイン、線画のイラスト、コピーライティング、ディレクションを担当しています。


約半年かけて、何度も楽しく打ち合わせして完成しました。


パッケージのリニューアルのお話をいただいたのは2020年の春頃。林ご夫妻と家族同様の付き合いをしている、友人の加帆里ちゃんからでした。ウェブサイトを訪ねてみると、素敵な農園であることがひしひしと感じられ、深く感銘を受けました。先の見えない時間を過ごしていた私に、一筋の光のように差し込んだ出合いで、その理念に触れ、襟を正されたのを覚えています。


お仕事をご一緒できることを大変光栄に思い、これは何としてでもよいものを作らなくては!と思いました。スタッフの皆さんにお会いして、そのお人柄に触れ、その気持ちは一層深まりました。


そしてぶどうの美味しさといったら! マスカットって、こんなに美味しいの!? これは、本当にレーズンなの? 


「風景が見えて、余韻を残すぶどう」


私が誰かに研究所のぶどうの説明をするときの言葉です。





レーズンのパッケージですが、あえてレーズンそのものを見せることはしていません。


研究所のシンボルともいえるガラス温室を描き、デザインしています。


研究所がある岡山市津高地区は、温室栽培発祥の地。

先代から受け継がれたガラス温室は、ビニールハウスが主流の現代では、全国的に大変珍しく、100年以上続く農家である研究所の貴重な財産の1つなのです。

壊れてしまうと、修理できる人はもういないのだとか。



研究所では、主にガラス温室を用いた温室栽培によって、海藻や酒粕などの有機肥料のみを使用した土壌で、できる限り農薬を使わず、大切にぶどうが育てられています。ガラスは紫外線を通しにくいという特徴から、皮が柔らかく、繊細な味わいのぶどうが育ちます。


ガラス温室は農園のシンボル的存在といえ、その風景を描くことで、研究所の哲学もパッケージを通して伝えられるのではないかと考えました。




実は津高地区は私の地元でもあります。子供の頃から当たり前の風景として親しんできたガラス温室。それがそんなにも貴重になっていたなんて、全く知りませんでした。台風などで壊れ、後継者もいなくなり、荒れ果てた温室を目にすることもあります。

当たり前ですが、ぶどうを育てる人がいるからこそ守られている風景なのです。


もしも、ぶどうを育てる人がもっと増えたら、風景は変わるでしょう。そして人の動きも変わるでしょう。

ワインラベルには、よく農場の風景や建物が描かれていますね。そんなヨーロッパの小さな町のように、ぶどうといえば、津高だね、なんて言われるようになったら…。

勝手にそんな景色を夢見ながら、研究所の哲学とガラス温室への思いを、パッケージデザインに込めました。


中に入るレーズンの個包装は全部で8種類あります。

各袋に貼るシールは、外箱の絵を8分割しています。



しかし、箱の絵ではぶどうは両脇にしか描かれていません。そのまま8分割すると、ぶどうの絵が入らないシールも出てきます。それだと小売する際、中身が何か分からないものが出てきてしまいます。ですので、それぞれのシールに必ずぶどうの絵が入るよう、ぶどうの絵を描き加えて再構成しています。




ただ単純に追加しているだけではありません。

両側にあるぶどうの絵、箱とシールでは、レイアウトが違うのがわかるでしょうか? 

1枚絵として収まる絵柄と、分割することを前提にした1枚絵は同じにはならないのです。




テキスト要素は、極限まで省いています。

もう少し説明を増やしたバージョンも提案していますが、みんなで悩んでこれでいこうと。




その代わり、裏面シールには、シンプルなパッケージを補うための情報をギュッと詰め込みました。先ほどお伝えしたような、私が深く感銘を受けた農園の哲学と、ガラス温室にまつわる話、そしてぶどうとレーズンの特徴を文章にまとめました。

小さなスペースに、限られた文字数で、熱い思いの丈を込めるのは大変な作業ですね。



さらに、英語がご堪能な奥さまにお願いして、短い英文も添えています。

海外からの旅行客に届けたいのは無論、岡山から世界へ羽ばたいてほしい、羽ばたくべき商品という思いも込めて。

スペースは極小ですが、できる限りの情報を記載しています。


そしてここにもガラス温室の絵をレイアウト。実はこの絵にも、わずかに調整を加えています。


ガラス温室の絵は、箱、表シール、裏面シール、それぞれで構成を変えているため、かなり時間がかかり、苦戦しました。研究所の哲学に恥じないよいものを作りたくて、妥協できませんでした。




箱は、まず既製サンプルを沢山取り寄せて比較検討したあと、数ミリ単位で調整して印刷所で何度か試作品を作ってもらいました。

最後には本紙校正も。

箱の用紙には、さとうきびの搾かすを混ぜて作られている、環境に配慮した非木材系のバガス紙を採用しました。

環境への配慮に加え、印刷も美しく、上品ながら温かみのある質感で、研究所のイメージにぴったりで、使用することができてとても嬉しいです。



パッケージのお仕事はほぼ初めてでした。


ですのでリサーチは、ネットや本だけでなく、たくさんの店舗に足を運び、商品や棚、お客さまの様子をじっくり観察し、情報と体験を蓄積しました。どんな仕事でも、必ずリアルな体験を大切にしたいと思っています。店舗でのリサーチはとても面白い経験でした。


半年ほどかけて一緒にお仕事できる時間は楽しいものでした。そして、しばしばレーズンやぶどうをいただいて、そのおいしさに毎回本当に感動しました!

レーズンは、あの高級列車や船でも取り扱われているそうです。





リニューアルしたこのパッケージの嬉しいご感想もいただいています。とても嬉しいです。

この上なく美味しいレーズン、ぜひ皆さまも召し上がってみてくださいね。


私もこれからプレゼントに、時々は自分へのご褒美に、ぜひとも利用したいと思っています。



林ぶどう研究所

「林レーズン3種食べ比べセット」

0コメント

  • 1000 / 1000